2009年12月15日
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下高井戸の商業的な中心地はどこか

Written By: 川俣 晶連絡先

 桜上水Confidentialさんが上北沢と桜上水という文章を書いていて、何回も「下高井戸」という言葉が出てきますが、地理的な範囲としての下高井戸にはほとんど入っていません。

 現在の主要な商業地は杉並区下高井戸ではなく世田谷区松原にありますが、これは昔からそうだったのではないか、という疑問があります。

 つまり、「五街道の1つ甲州街道沿い」が繁栄している訳ではなく、その宿場町である「下高井戸宿」が繁栄したわけでもない、ということです。

 実際には、通る大名は少ないのに労役の負担は大きく、下高井戸宿に良いことはあまりありません。逆に、下高井戸宿は低地の豊富な水を使った農業が得意です。

 つまり、以下のように考えられます。

  • 街道の通行人向けの店と、地元向けの店は同じではない
  • 街道の通行人向けの店は、街道沿いにあるだろう
  • 地元向けの店は街道を避けて立地しているかもしれない
  • とすれば地元向けの店は、甲州街道から南へ宿を避けて展開されるだろう
  • 両者をどちらも視野に入れた店は2つの道に近い方が有利
  • 最適の位置は、現日大通りの甲州街道近くとなる
  • 下高井戸宿の本陣は現在の桜上水駅近くにあるらしいが、商業地の中心は宿として線引きされた範囲外に位置し、現在の下高井戸駅付近ではないか

 言い換えれば以下のようになります。

  • 下高井戸には広義と狭義がある
  • 狭義の下高井戸とは負担を軽くするための方便としての区分であり、限定的な狭い範囲の「宿」を示す
  • 広義の下高井戸とは宿の周囲を含んで、実際の経済圏としての下高井戸である
  • 区分を決めるにあたっては下高井戸や上高井戸などは、それなりに美味しいため奪い合いになったが、そのとき商業地は重視されず、広義の下高井戸は泣き別れになって決着した
  • その結果、杉並区も世田谷区も下高井戸には手を出しにくい。1つの区だけで話がまとまらないからである
  • その結果、下高井戸は割と立ち後れた地域となった

感想 §

 更に言えば、杉並区成立直後の下高井戸の扱いはどうであったのか、という疑問もあります。また、「上高井戸」から「高井戸」が分離して別の地域になった経緯も別に興味深いものがあります。実際、現在の上高井戸は驚くほど小さい地域でしかありません。

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